お釈迦さまが80歳になられたときのことでした。雨期の雨が降り注ぐのを眺めながら、お釈迦さまはアーナンダという仏弟子に話しかけられました。アーナンダはお釈迦さまの身の回りのことを任された仏弟子でした。
「アーナンダよ、わたしはもう随分と老いてしまった。この人生の旅路ももう終わろうとしているようだ。見てみなさい。ちょうど今、雨の中を通っていく古ぼけた荷車がある。荷車は自ら動くことはない。牛につながれた革紐に引かれて、やっとのことで動いている。そして、長年牛に引かれ傷んだあの荷車はもうすぐ壊れ、そして朽ちてしまうことだろう。私もあの荷車と変わらない。紐に引かれて、かろうじてこの人生の旅を続けている。そして、その旅ももうじき終わる。」
それを聞いて、アーナンダは驚き、目を見開いてお釈迦さま駆け寄り申し上げました。