掲示法語・配布法話 「だれか」でなく 「わたし」のための ご本願
2月の掲示法語の解説法話です✨
【掲示法語】
「だれか」でなく
「わたし」のための ご本願
【法話】
親鸞聖人は、「生きとし生けるものすべてを必ず救う」と誓われた阿弥陀さまのご本願を喜ばれ、私たちに伝えてくださいました。
そして、親鸞聖人はそのご本願を、
「よくよく考えてみれば、阿弥陀さまの本願は、この親鸞一人のためであった」
と喜ばれています。
救いの目当ては「だれか」なのか「わたし」なのか。ここには、非常に大きな違いがあるように思います。
アメリカ・テキサス州デントンの郵便配達員、イアン・バークさんには、ある日課がありました。それは、担当地域に住む高齢の男性が飼っている、「フロイド」という犬を毎日ハグすることです。
イアンさんが郵便を届けるたび、フロイドは玄関から飛び出し、尻尾を振ってイアンさんを熱烈に歓迎しました。この心温まる交流は、担当ルートが変わるまで約3年間続きました。
イアンさんの配達ルートが変わり、フロイドと会えなくなってしばらく経ったある日のことです。イアンさんは同僚から、衝撃的な知らせを聞きました。
「飼い主が亡くなって、フロイドは動物保護シェルターに送られたらしい」
それを聞いたイアンさんは「フロイドを放ってはおけない!」と居ても立ってもいられなくなり、すぐに行動を起こしました。
翌朝、シェルターの開門10分前には、入り口に立つイアンさんの姿がありました。そして門が開くと同時に、フロイドの引き取りを願い出たのです。
奥から連れて来られたフロイドは、大切な飼い主を失い、不慣れな環境で元気をなくしてやつれていました。しかし、イアンさんの姿を一目見た瞬間、喜びを爆発させ、ちぎれんばかりに尻尾を振って、鳴きながらイアンさんに飛びつきました。こうしてフロイドは、イアンさんの家族として迎え入れられたのです。
イアンさんはメディアの取材に対し、こう語っています。
「僕にとってフロイドは、単なる『どこかの保護犬』ではありません。よく知っている、特別な存在なのです」
私は、この「どこかの誰かではなく、よく知っている特別な存在」という言葉を、ありがたく聞かせていただきました。
フロイドもまた、イアンさんが不特定多数の「だれか」を救いに来たとは思わなかったでしょう。「ああ、あの人が『わたし』を救いにきてくれた」と喜んだに違いありません。
親鸞聖人は、阿弥陀さまの本願を、不特定多数の誰かを救うものだとは受け取られませんでした。救い難い業を背負ったこの私を、阿弥陀さまはすべてご存じで、その上で、私を「特別な存在」として救いたいと願ってくださっている――。そのことを、何とも味わい深く受け取られたのです。
南無阿弥陀仏は、この私のために阿弥陀さまが居ても立ってもいられずに救いに来てくださった、「わたし一人のため」のお姿です。
私もまた、「この救い難い正信一人のためであった」と、ご本願のお念仏を喜ばせていただきます。
南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
一念寺住職 保田正信
【聖典のことば】
弥陀の五劫思惟の願をよくよく案ずれば、ひとえに親鸞一人がためなりけり(『歎異抄』後序)