高槻一念寺

高槻市下田部町の一念寺(浄土真宗本願寺派)のブログです。お寺の日常について発信しています。

掲示法語・配布法話 お彼岸に 「あの人」が居る 浄土をおもう



3月の掲示法語の解説法話です✨
【掲示法語】
お彼岸に 「あの人」が居る 浄土をおもう
【法話】

 彼岸とはお浄土のことです。
 お経には、「浄土は十万億の仏土を過ぎた西の彼方にある」と説かれています。気が遠くなるほど遠い場所として語られるのは、私自身の煩悩の深さ、救われがたさを表しているのでしょう。一方で、お経には、「阿弥陀仏はここを去ること遠からず」とも説かれています。ここでは阿弥陀さまの救いのはたらきの強さを表しているように思います。
 また、私は「遠くて、近い」という矛盾した距離感を、心の距離感として受け取ることができるように思っています。
 二月二十日放送の「探偵ナイトスクープ」に「喫茶店のマスターに恋する三歳児」というエピソードがありました。
 札幌の三歳の女の子、コハクちゃんは、生後七か月から、ある喫茶店に通っていました。大好きなマスターが作るサンドイッチがコハクちゃんにとっては世界一のご馳走です。お店へ向かう道すがら「マスターに会うのドキドキする」と赤い頬をさらに赤らめる姿は、まさに初恋そのものでした。
 しかし、そんなコハクちゃんの家族は、お父さんの転勤で一月末に名古屋へ引っ越すことになってしまいました。
 お別れの日、恥ずかしくて言葉の出ないコハクちゃんをマスターは優しく包み込み、「またおいで。会いにも行くからね」と涙を流しました。
 実は、マスターにとってもコハクちゃんは単なるお客さんではありませんでした。三歳で亡くした愛娘の面影をコハクちゃんに重ね、その成長を見守ってきた、かけがえのない存在だったのです。
 最後にコハクちゃんは、マスターへの大好きな気持ちを伝えるお手紙を書き、マスターの前で読み上げました。
 札幌と名古屋は、地図の上では八百キロ以上離れています。その意味では、お互いがとても遠い場所です。
 しかし、コハクちゃんがマスターの笑顔を思い出すとき、札幌は「マスターがいる場所」として胸の真ん中にあることでしょう。マスターにとっても、コハクちゃんを想うとき名古屋はただの遠い場所ではなく、「コハクちゃんが居る大切で身近な場所」になることでしょう。
 阿弥陀さまからすれば私の居る娑婆世界は遠くないのでしょうが、凡夫の私からすれば、さとりの世界であるお浄土は、本来は遠い世界です。
 しかし、先に往かれた方を偲ぶとき、私にとってのお浄土は「あの人が待っていてくれる温かな場所」として遠からず、胸の真ん中にある世界となります。南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏
一念寺住職 保田正信
【聖典のことば】
「阿弥陀仏、ここを去ること遠からず」『仏説観無量寿経』